京都・西陣の希少な伝統技法「引箔」を用いた生地。
引箔とは、金箔や銀箔、色箔を和紙に貼り、その紙を細く切って糸状にし、織り込む技法。
箔を布地に押し当てるのではなく、糸そのものとして織り込むという独自の発想が、古来より特別な奥行きを持つ美しさを生み出してきました。この伝統的な技法を現代に応用し、ツイードのような立体感と奥行きのある 独特な風合いを表現しています。
この引箔は一人の職人だけで完結する技術ではありません。
箔を紙に貼る人、和紙を糸のように細く裁断する人、紋図といわれる設計図を作る人、経糸を整える人、織機で布へと織り上げる職人...
分業により、各工程ごとに卓越した専門性が求められ、それぞれの分野を極めた職人たちの手によって、はじめて1枚の生地が完成します。
現在、この技術を扱える職人はわずか数名。いずれも高齢化が進み、後継者はほとんどいません。「10年後には失われてしまう技術」と言われるほど、引箔は希少な技術となっています。
職人の繊細な手によって織機に通された箔を引いた糸は光によって表情を変えます。
朝には柔らかく、夕暮れ時にはほのかな温度を纏い、夜の灯りの下ではくっきりとしたコントラストを放ちます。その移ろいは、手仕事による繊細な感性によって生まれるかけがいのない美しさです。
だからこそ、私たちはこうした技術を未来へと繋いでいくことをものづくりの核心に据えています。長い年月が生んだ日本の美意識を絶やすことなく、現代のクリエーションと重ね合わせることで、新たな価値として紡いでいきます。





